翻訳機

ぼくはきみの翻訳機になって
世界を飛びまわってみたい
高い空を斧でまっぷたつに
箱のなか震える心臓

カーテン揺れる
踊る光

ぼくはきみの気高さを掲げ
恥じ入る彼らを見てみたい
どこにだって友達はいるよ
誰もぼくらを知らないけど

あのひとごみのなかから
きみのうまれた街を繋ぐ
歌を誰が歌うのさ
静けさが息を荒げる
電話の向こうで

世界中によくある話は
剥製のように呼吸がない
かつてきみは愛した機械で
命を吹き込もうとしたけれど

誰も耳を貸しはしない

あのひとごみのなかから
きみの育った街を繋ぐ
歌を誰が歌うのさ
それはもうすでにそこにあるよ

きみはどこへ行ったの
言葉だけ残して
きみはどこへ消えたの
風だけおこして
きみはどこへ行ったの

あのひとごみのなかから
きみはうまれた街を失う
歌を誰が歌うのさ
静けさが息を荒げる
あのひとごみのなかから
きみのうまれた街を繋ぐ
歌をぼくが歌うのさ
双眼鏡をのぞいたなら
きみはそこにいる

ぼくが飛ばす飛行機のなか
横たわるきみの席はファーストクラス
燃料は楽しかったこと
悲しかったことのせめぎ合い
悲しみには終わりがないね
終わりがないのは悲しいからね
ぼくはきみの翻訳機になって
世界を飛びまわってみたい
悲しいね 悲しいね 悲しいね
ときどき 楽しいね
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