夏みかん

クツ下片っぽ見つからないから出かける気がしない
それなのにヤツらの電話がしつこいよ「いつもの公園で待ってるぜ」

木の枝で青空に書いた「何にもねぇけど楽しいな」
投げた小石が水溜りに書いた「何にもねぇけど楽しいな」

夕焼け空と想い出は重なり合うと涙になってしまうから
記憶喪失にでもなってしまおうと 額にそっと夏みかんをぶつけてみた

呑み明かすにはお金が必要で 語り明かすには友達が必要で
どちらも不自由してないはずなのに
ときどき淋しくなるのは 僕が大人になったからだろう

受話器の向こう側の友の声「何にもねぇけど幸せだよ」
あの頃の僕も 今の僕も「何にもねぇけど幸せだよ」

夕焼け空と想い出は重なり合うと涙になってしまうから
記憶喪失にでもなってしまおうと 額にそっと夏みかんをぶつけてみた

何にもねぇけど楽しいな
何にもねぇけど幸せだよ
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