群衆

私は思い出す あの日を
街の祭のあの日を
あの日 あの人が いつの間にか
わたしのそばに 押されて来た

ふたりは人の波間に
ただよいながら
もまれては 肌をふれあい
そしていつかひとつに結ばれた
しあわせに酔いしれた 街の祭
汗ばむ指を からませては
踊りくるう ファランドール
恋の踊りよ
強い腕に 抱かれて飛びあがる
喜びにあふれたふたりだったよ

あなたのほほえみはこの身に
しみてあたしを酔わせた
だけど人の群れは やがて
この手から恋を うばい去った

私は人の波間に妨げられて
あなたの姿を失い
叫びもまた あなたに届かない
私は怒りの涙にぬれて
人の陽気な叫びと笑いの嵐に
遠くへ連れて行かれた
あなたをくれて あなたを奪い去った
人の群れを私は呪うのだ
×