人面瘡

吉原もいつしか小夜(さよ)ふけて
戦慄の笛竹むせび泣く
菖蒲(あやめ)太夫に岡惚れ徒(あだ)情け
××〔こつじき〕男(を)の子(こ)の無念の調べかな

不忍の池には身投げせし
男の子の生首笑うとか
魂魄残りて菖蒲の恨めしや
女陰(みほと)の爛(ただ)れてあの世と舌を出す

だらだらどろどろ血みどろ人面瘡
だらだらどろどろ血みどろ人面瘡

横浜の波止場はぬばたまの
黒船が闇夜に消え失せる
洋妾(ラシャメン)お駒の首吊る床の間は
メリケン憎しと散りぬる女郎花(おみなえし)

だらだらどろどろ血みどろ人面瘡
だらだらどろどろ血みどろ人面瘡

愛して 憎んで 恨んだ果てに
呪って 叫んで 狂って生える

七色の人面瘡 闇に咲く人面瘡

口から 鼻から 血膿を吐いて
乳から 臍(へそ)から 笑って生える

七色の人面瘡 闇に咲く人面瘡

七色の人面瘡 闇に咲く人面瘡
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