ハザクラ

満員電車の中
ここを 通りかかると
そっと 瞳とじて
あの日の事 思うの

旧いボートハウス 春の雨上がりには
甘い香りがした そしてそばにあなたがいた

慣れない手つきで漕ぎだせば
可笑しいことないのに笑いあう
「一番端の、木蔭めざそう」
同じ未来 光の中 見つめていたよね

ひらひらと風が吹き抜けると
こぼれてく無数の花びら
この時が いつまでも
続けばいいと思ってた
ゆらゆらと揺れる水面には
儚げな淡い夢 浮かぶ
この胸に 今でも
咲いている 葉桜

ぬるいミルクティーを 二人分け合うけど
ふっと遠い目をして どんな明日を描いてるの

不安な気持ちを閉じ込めて
前向きな言葉だけ交わして
ただ、無邪気にうなづくわたしは
信じること 見守ること それしかできずに

頬寄せた樹には若い緑
次の季節 来ると伝えてる
この時が いつまでも
続くことはないと教えてた
「綺麗だね」てつぶやく横顔
短い恋の色
終わらないで 行かないで
つなぎ止めることはできないの……

わかってた だけど微笑んでた
儚げな淡い夢 浮かぶ
この胸に 今でも 咲いている葉桜
あなたと見た 葉桜
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