サクラ知れず

小さな花びらが 川面にゆれ落ちて
時間を航るように 静かに流れてく
黙ったままの二人

桜が終わったら 東京も一瞬(すこし)だけ静かになるね
夏がくる頃には 夏がくる頃には
あたしも 帰郷(かえ)ろうかな

ごめんね あたしやっぱり
あの人を忘れてない
いつでも いつでも あなたは
そばにいてくれるのに
溢れるほどたくさんの
愛をくれた人だったね
バカだね バカだね これじゃ
幸せになれないね

あなたとあの人と あの日飛び乗った
東京行きの列車は どこへ向かってるの
どこまで流れてくの

夢見た頃は過ぎ去り
ふるさと遠く微笑み
呼んでも 呼んでも ここには
あの人はもういない
もしもひとりぼっちだったら
行方知れずこの街で
何にも 何にも 見えずに
震えてただけでした

あなたはわかってたんでしょ
なのにやさしかったんでしょ
あの人も許してくれるでしょう
でもね
弱いままの自分じゃ
誰も愛せないから
ねぇそうでしょ

ごめんね あたしやっぱり
あの人が好きなんだよ
どうしても どうしても あなたに
嘘なんかつけないよ
ごめんね あたしやっぱり
一人で歩いていくよ
もう少し もう少し ここで
頑張ってみるから
さよなら
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