陽炎

零れた絵の具の様に
樫の木と夕暮れが
夏の空に滲んでいく
「この世界全部奇跡だけで出来たのよ」
あなたは独り言のように言う

今も見える小さな背中には
僕のあげた愛がまだ残っていますか
揺れる陽炎
全てが奇跡なら
時間を元に戻して

悲しみを押し隠す
切な気な横顔や
答えのない不安には
綺麗事だけで描く未来じゃ役不足
それでもあなたが好きでした

廻り廻る
曖昧な愛の中
奇跡と名付けられた傷が痛いよ

独りよがり
広がる隙間には
言葉に出来ない寂しさが

今も見える小さな背中には
僕のあげた愛がまだ残っていますか
揺れる陽炎
全ての奇跡には
あなたが居てさ

「見つけてくれて本当にありがとう」
いつまでも言えないまま
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