ふるさと月夜

東京始発 ふるさと行きの
思慕(おもい)乗せてく 列車の軋み
桜前線 北へと流れ
生まれ故郷(こきょう)も 花見の頃か
待っているだろ おふくろさんは
眠れぬ夜が明け もうすぐ逢える

彼女(あいつ)は俺の 帰りを待てず
去年(こぞ)の春だよ 嫁いでいった
今じゃ子もでき しあわせだとか
達者(まめ)でいるなら 祝ってやろか
ひとりしみじみ この胸ちくり
ちょっぴり苦いぜ コップの地酒

うれしさ堪(こら)え 気づかう母に
たった二夜(ふたよ)の 親孝行(こうこう)なれば
黙りこんでは 目頭拭う
老いの身に染(し)む 思い出ばなし
別れつらかろ 明日(あした)の朝は
空にはまんまる ふるさと月夜
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