シンセサイザー

ボサボサの頭で君に会いにいく
果たされた関係を終わらせるため
「わかった」と明るく一言
君は忙しそうに電話を切った

外に出ると冬に向かう風の冷たく乾いた匂いがして
ポケットに手をくるめながら君が少しだけ
君が少しだけ強くしてくれたことを思い出す

僕は君の君は僕の中にあるくすんだ鏡に映って始まっただけなのに

ああ胸が痛むのは君のせいか風のせいかわからない
もう戻れない

人ごみにまぎれていつもより足を伸ばして駅の改札近く
置き場のないこの心を突き刺すように
突き刺すように都会は今日も笑う

改修工事まっただ中の頭ん中は君の顔で埋めつくされたまま

ああ胸が痛むのは君のせいか街のせいかわからない

ああ胸が痛むのは君のせいか風のせいかわからない
もう戻れない
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