狂女

女がまだきれいだったとき
父と夫とぼうやとが
続けて死んでいきました

三人の影を抱きしめて
女が床に臥せたとき
国にいくさがおきました

女の思うことおなじこと 思いはぐるぐるめぐる

父さんどこへいったろう
あの人今日も帰りが遅い
ぼうやよ早く出ておいで
私はここで待ってるから

兵士が家までやってきて
立てと命じたときも
女は同じ床の中
三人の影を思い出す

兵士が女の床ごと持ち上げ
林の中へとかついでも
女は微かに笑ってた

雨がけぶり雪おりて それがとけていくさも終わり

林に一つのされこうべ
女のそれかは知らないが
風が吹けば聞こえるそうな

父さんどこへいったろう
あの人今日も帰りが遅い
ぼうやよ速く出ておいで
私はここで待ってるから
×