名も知らぬ花

立止りたる足元に
可憐な花が二、三輪
薄紫に 紅さして
とまどう我に微笑みし
名は知らねども いじらしや

人目につかぬ この花も
春にめざめて色めきて
足音しげき道端で
誰を待つ好きな人
小さな胸をときめかし

かゞんでそっと手に触れる
米粒程の花弁が
カトレアに似て ほゝ笑まし
小さくとも 人並に
我知らず 独言

小さくとも 人並に
我知らず 独言…
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