きみの匂い

「ごめん!今日泊めて。終電なくしちゃってさ。」
うんざりしながら「いいよ。」って返す

少し愚痴ってお酒でも飲んで
終わっちゃったらすぐに後悔して

悪いことなんてしてないのに いつも僕を置いて始発で帰る
それがなんだか今夜は寂しくてさ
思わずこぼれた
「明日は何時に起きるの?」

きみの匂いを抱きしめて 疲れて眠って 心の隅っこで泣いた
アラームが鳴って 明日が来て 何もなかったように
きみがこの部屋を出るまでは 僕だけのきみでいて

気づいたら寝ちゃってたきみの抜け殻 ハンガーにかけて一息ついて
充電器に繋げっぱの電話が また震えているよ? 忙しそうに

誰かがきみを呼んでいるよ きっと僕以上に大事な人が
なんでこんな近くにいるのに 肝心なことは今さら言えないまま

同じ匂いに包まれて 一つになったって 心は一人ぼっちじゃないか
でももう少し もう少し ただ願ってた
それぞれのやるべき事が さよならをさせるまで

全て失くしてしまったら
自分に嘘をつくのをやめたら
どうしたら きみはずっとここにいてくれるの

きみの匂いで目が覚めて 胸がギュってなって
慌てて準備してるきみの携帯が鳴って
服を着て ヒールを履いて
寝ぼけてる僕に「じゃあね。」と
部屋を出て行くその背中に 消えそうな声で囁いた
「好きだよ。」って
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