くだもの

遠くせつない記憶のほとり
不思議な巨人になっちゃった
ひとりの幼児がないている
幼児のおびえてるものかげは
原因不明のさびしさですよ

頭に掘られた井戸の底で
無表情の蛙がひとり
まあるい小さな夜空を見つめ
ああかなしい跳躍くりかえしてる
それがぼくの頭痛の原因ですよ

疲れて倒れて眠るぼくの
脚が畳を通り抜け
庭のやつでの根っこからまって
ほらひとり畳の上で木になっちゃった
そういうあそびをしています

さかなになるよりもっと前のぼくの
たわんだ背中の溝深く
かなしい情緒の種がまかれて
今たわわに実った脊髄の
ぼくがくだものなんですよ
ぼくがくだものなんですよ
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