向島・夕立ち荘

遠い稲妻 降る雨に
胸の赤い血 騒ぎます
今ごろあなたは 言問橋を
渡り始めて いるでしょう
泣いたそばから すぐ咲く笑顔
おまえの涙は 夕立ちと
あなたはからかい のぞきこむ
花火の帰りの 別れ道
雨に忍んで 向島
駆けて落ち合う 夕立ち荘

胸を裂くよな かみなりも
あなた待つ身は 静かです
不幸ばかりが よく似たふたり
縁が結んだ 丸い仲
酉の市から 帰りの寒さ
屋台のお酒で 暖めた
あなたに出逢った 幸せは
わたしにとっては 宝です
過去はすっかり 雨に消し
ふたり旅立つ 夕立ち荘

濡れるほどでは ない雨なのに
人目を忍んで 開く傘
知らない町でも ふたりなら
世間の噂(かぜ)にも 耐えられる
晴れて陽も射す 向島
虹も二重に 夕立ち荘
×