波がよせて かえして
日が暮れる浜に
帰る所をなくした若者
母の胸で 泣けたころが
幸福だったと
桜貝をなげる 波の果へ
何が欲しい 何が欲しい
故郷行きのキップが欲しい
何が欲しい 何が欲しい
待っていてくれる恋人が欲しい

人は声もかけずに
とおり過ぎてゆく
波が足跡 すぐに消しに来る
母の匂い 父の声を
胸に呼びおこし
寂しげな口笛 吹きつづける
何が欲しい 何が欲しい
やすらかに眠るベッドが欲しい
何が欲しい 何が欲しい
心あたためる夕焼けが欲しい
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