お世話になりました

春一番が駆けてゆく庭 おなじみの窓の景色
家具の消えた部屋から見てると いつもより寒そう

ママに隠しごとするときには よく使ったベッド下
陽の光をこんなに浴びたら 少しあっけないね

今日でお別れだよね 猫のミケに話したら
大きなアクビひとつしたきり また目を閉じた

誰にも見られずにおセンチになれたこの部屋でひとつ
深呼吸をしたら言いましょう
「お世話になりました」

散らかしてばかりと怒られた この部屋も片づけたら
空っぽのスペースに思い出が全部入りそうね

お気に入りのポスターはがした後の壁紙
哀しいくらい白く 心に突き刺さるから

新しい街の一人暮らし 希望と不安にゆれる
心にシャッターを切りながら
「お世話になりました」

照れくさくて言えない気持ちはこのまま置いてゆくから
最後にもう一度言わせてね
「お世話になりました」………
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