燕の来る頃に

歩道橋の下に燕が巣を作ったと
お前が言ったのは朝だった
俺は髭を剃りながら
春だからねと言った
玄関のベルがなって小さなトラックが
お前の荷物を運んで行った
二年ばかりの生活のうちに
白いタンスと鏡がふえた

歩道橋の下に燕が巣を作ったと
お前が言ったのは朝だった
俺はそれを想い出して
服を着替えて行った
黄昏の歩道橋は夕陽に照らされて
燕の姿はどこにもなかった
今日から一人と思ったとたん
赤い夕陽が心に落ちた
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