お芝居船

おとす白粉(おしろい) さびしい素顔
わたしゃ瀬戸海 旅役者
泪一すじ お芝居船で
きくは千鳥の声ばかり

あの夜 舞台の 前髪すがた
見染められたか 見染めたか
月もおぼろに 幟(のぼ)りのかげで
人目忍んだ影法師

呼ぶは千鳥か あの娘の声か
淡路寝たやら 灯が見えぬ
逢うた夢さえ お芝居船は
つらや波めが揺りおこす
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