ハロー、ワールド

「触れるな お前も人間のくせに」
気位の高い猫の紳士は声を絞るが
血を流しすぎたその体に力はなく
抱き上げると羽のように軽かった

紳士、どうか今は静かに
僕は車があなたの上を走るのを見ました
例えあなたが拒絶しようとも
見過ごすわけにはいきません

「なぜ私の言葉がわかる」と
紳士は訝しげに髭を揺らす
その嫌悪の目は見慣れていた
僕は半分猫なんです

ハロー、ワールド
あなたの世界に
関わらせてくれませんか
ハロー、ワールド
どちらにも入れない
僕にどうか一歩目を
ハロー、ハロー

「君は人間の姿を選んだ
ならば人間として生きるべきだろう」
彼らもあなたと同じなのです
自分と違うのが怖いのです

ちっぽけなくせに恐れられる
半端な僕には半分しか
わからないかもしれませんが
どうか声を聞かせて

ハロー、ワールド
「君は実に愚かだ
どちらからも敵として見られ」
ハロー、ワールド
「どちらにも味方する
愚かで不憫な少年だ」
ハロー、ハロー

病院まで持たない最期の息を
紳士は僕に向けた

「ハロー、ワールド
誰かを半分でも
わかればそれは魔法のようだ
ハロー、ワールド
それほど誰もが遠い
それでも呼びかけ続けなさい
ハロー、ハロー」
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