サラダ記念日

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
砂浜を歩きながらの口づけを午後五時半の富士が見ている
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
また電話しろよと言って受話器置く君に今すぐ電話をしたい
気がつけば君の好める花模様ばかり手にしている試着室
この部屋で君と暮していた女(ひと)の髪の長さを知りたい夕べ
明日まで一緒にいたい心だけホームに置いて乗る終電車
愛人でいいのとうたう歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う
今あなた仕事のことを考えていたのね「え? ああ」なんて答える
「俺は別にいいよ」って何がいいんだかわからないままうなずいてる
「平凡な女でいろよ」激辛のスナック菓子を食べながら聞く
「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの
ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう
愛してる愛してない花びらの数だけ愛があればいいのに
男というボトルをキープすることの期限が切れて今日は快晴
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