海の薔薇

海に投げた薔薇は
遠い夏の私
ああコバルトの波に
哀しくあざやか

4年ぶりのコテージの
広すぎる部屋で
風を抱いて 目を閉じれば
ほら二人がいる

あなたは毎日 絵を描(か)き
私はパンを焼き
若さという名の ワインを
唇で飲ませ合って…

永遠の真夏が
つづくと信じたのに
突然の嵐が
夢をひき裂いたの

あれから静かな倖せ
着こなしているけど
描きかけで あなたが捨てた
絵の中に 帰りたくて…

誰にもただ一度
生命(いのち)の夏があるの
それは愛と未来(あす)が
ひとつだった季節

海に投げた薔薇は
遠い夏の私
ねえ二度ともう人を
あんなに愛せない
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