残月 大利根ごころ

風が身にしむ こころが寒い
情け借り着の 大利根ぐらし
夢にはぐれた 男の胸を
筑波おろしよ なぜ叩く
どこでどこで どこで散るやら
徳利ゆすって 酒に聞く

「憂き世しがらみ 大利根川に
捨てていつしか 若さも錆びた
江戸は西空 お玉が池も
今じゃ遥かな 夢の夢
月に吠えても
男五尺の 影が哭く」

破れ雲間に のぞいた月よ
思いださすな 故郷の空を
渡る雁がね 二声 三声
圃(な)けば妹の 声になる
泣いちゃ泣いちゃ 泣いちゃいないか
声をかけたや なみだ月

義理の懸け橋 笹川堤
伸びた月代(さかやき) ざんざら真菰(まこも)
酔ってよろけた 男の意気地
せめて支える 落し差し
胸に胸に 胸にたたんだ
男ごころを 誰が知ろ
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