若かりし母の歌

旅から帰る 父を待ち
夜なべに励む 女でした
子供は早く 寝なさいと
頭をなでながら うたってくれた
まだ若かりし あの母の歌

夜汽車で帰る 父のため
寝酒をつける 女でした
父ちゃんだけで ごめんねと
子供の前でも のろけてみせる
まだ若かりし あの母の声

便りもくれぬ 父のため
陰膳よそう 女でした
夕飯どきが くるたびに
時計を見上げては ためいきついた
まだ若かりし あの母の瞳よ
×