流氷番屋

流氷離れりゃ 番屋の浜に
海猫(ごめ)と一緒に 春が来る
はぐれハマナス 咲いたけど
漁に出たまま 行ったまま
帰らぬ亭主(あんた)を あてなく待って
今日も番屋で 飯支度(めしじたく)

元気を出しなと コップの酒を
そっと差し出す 荒れた指
恋しあの人 思い出す
口は荒いが 男衆(やんしゅう)の
優しい心で 支えてくれる
漁師仲間の 情(じょう)に泣く

あの人奪った この海憎い
沖をにらんで 石を蹴る
波にあくたれ ついて泣く
魚臭さの しみついた
髭面(ひげづら)笑顔で 私を抱いた
太いあの腕 返してよ
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