二度惚れ小唄

花の隅田(すみだ)の 川風に
河岸(かし)の柳もネー
ゆれてゆらゆら ふたり連れ
人の恋路をネー
邪魔をしたくは ないけれど
したくなるよな おぼろの月に
うつす俤(おもかげ) ただひとつ
女ごころの 黄八丈(きはちじょう)
帯をほどいて 欲しいのに
エー きっと きっと きっと きっと
きっと きっと 逢いに来て

好きと言いたい すがりたい
そればできればネー
胸のつかえも おりるのに
羽(はね)を濡らしてネー
都鳥(みやこどり)さえ しっぽりと
粋(いき)で勇肌(いなせ)で ちょいとつめたくて
うしろ姿が また良くて
寝てはまぼろし 夢うつつ
こんな想いに させた人
エー きっと きっと きっと きっと
きっと きっと 逢いに来て

どこのお人か 知らないが
野暮はおよしよネー
石を投げれば 波が立つ
土手を八丁ネー
まわり道して 馬道(うまみち)へ
格子造(こうしづく)りの 二階を見れば
渋いあの声 木遣(きや)り節
わたしゃ二度惚れ 三度惚れ
いつかいいこと 待乳山(まっちやま)
エー きっと きっと きっと きっと
きっと きっと 逢いに来て
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