御前の瞳に羞いの砂

心悸 其れは 時空も 歪める程
手前勝手な 心思い
然れども 只 此の身は 老い 曝らぼう
淡い 寂寞の 欠片

離れてより はや幾年 忘る程 なれば
変わり果てた 此の 容姿を 御目に
晒せようか

(老嬢) 砂混じりの 宵 瞼を 閉じて
(老憊) 泥塗れの 恋 さも あらねば
其の 瞳に 羞いの 砂を

瞬く うちに 過ぎたる 時間を忌む
軽い 六垢な 心根
然りとて 最早 笑えるはずもない
深い 悲しみの 欠片

如何にしても 繕いたい 叶わねば 然らば
見る影無い 枯れた 顔で 御目を 汚せようか

(老嬢) 砂混じりの 宵 瞼を 閉じて
(老憊) 泥塗れの 恋 さも あらねば
其の 瞳に 羞いの 砂を

離れてより はや幾年 忘る程 なれば
変わり果てた 此の 容姿を
強いて 視ると 言うか

(老嬢) 砂混じりの 宵 瞼を 閉じて
(老憊) 泥塗れの 恋 でも 視ようとして

(老嬢) 袖を噛む 迷い 逢いたい 然れど
(老憊) 待ち過ぎた 報い 遅すぎたと
目眩撃ちに 苛立ちの 砂を
だから 早く 逢いに来て
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