うつろいゆく者たちへ

桜もいつの間に散っていて
見上げる前に散っていて
忙しなく動く日々へ言い訳
私もこのまま散ってゆくのか

「あなたは真面目に生きてきたのね」
占いのおばさんは自信ありげに
一万円で買った一時間
馬鹿みたいだと自分を責めた

うつろいゆく景色に捧ぐ
もう少しだけゆっくり
うつろいゆく君に捧ぐ
もう少しだけ、私を

外で騒いでいる子供の声を
聞きながら夏はすぐそこに
友達の久しぶりの連絡さえも
二日も止めたまま 情けないな

“あんたまだ家を出ないのかい”と
嘆くドラマの母の台詞
うちの母は背中を向けたまま
どうでもいいような事を呟く

うつろいゆく景色に捧ぐ
もう少しだけゆっくり
うつろいゆく君に捧ぐ
もう少しだけ、私を

うつろいゆく季節に捧ぐ
もう少しだけゆっくり
うつろいゆく君に捧ぐ
もう少しだけ、私を
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