バス通り

昔の女をだれかと噂するのなら
辺りの景色に気をつけてからするものよ
まさかすぐ後ろの ウィンドウのかげで
いま いわれている私が
涙を流して すわっていることなんて
あなたは夢にも思っていないみたいね

バスは雨で遅れてる
店は歌が 止まってる
ふっと聞こえる 口ぐせも
変わらないみたいね それがつらいわ

時計をさがして あなたが店をのぞくまで
私は無理して笑顔になろうとしてる

古びた時計は今でも昔のように
あなた待ちわびて 十時の歌を歌いだす
小指をすべらせて ウィンドウをたたく
ねえ 一年半遅刻よ
あの日はふたりの時計が違ってたのよね
あなたは ほんとは待っていてくれたのよね

バスは雨で遅れてる
店は歌が 流れだす
雨を片手で よけながら
二人ひとつの上着 かけだしてゆく

ため息みたいな時計の歌を 聴きながら
私はガラスの指輪をしずかに落とす
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