父娘うた

おんなだてらに 故郷(くに)出てきたが
胸にさわぐは 父の声
錦飾れる その日まで
二度と敷居は またぐなと
あれは十九歳(じゅうく)の春弥生(はるやよい) あゝ春弥生(はるやよい)

泣くな泣くなと わたしをあやす
父が泣いてた 日暮れ坂
母を知らない 幼子(おさなご)が
父の背中で 聴いたうた
今も聴こえる子守うた あゝ子守うた

千里万里を 行くことよりも
背なに重たい 親の恩
それを承知の 親不孝
詫びる都の 十三夜月(じゅうさんや)
ひとり今宵(こよい)も手をあわす あゝ手をあわす
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