海の声、山の声

去年ひろった 貝がらを
耳にあてたら 声がする
“今年も早く いらっしゃい
白い浜辺に”
心の中を 吹きぬける
波の音 熱い風
7月の私は
今でも少女です

螢袋(ほたるぶくろ)が はさまれた
詩集ひらけば 声がする
“今年も早く お乗りなさい
高原列車に”
カラマツ林の ベランダの
ゆり椅子が くれた夢
あざやかに 思い出す
風のない 午後です

都会の空の むこうから
海の声 山の声
7月の私は
今でも少女です
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