旅の手紙

あなたは見たでしょうか
さい果ての海
波のしぶきこごえて
悲しく飛んでいるのよ
心までもちぎれて飛ぶ
荒くれたこの岬
ふり向けば あなたの
やさしい想い出ばかり

ひとりの旅の寒さ
初めてでした
何かあるとおもわず
あなたに声をかけるの
かもめまでも鳴きながら飛ぶ
色あせたこの海峡
たたずめば 二人の
かえらぬ足跡ばかり

あなたは見たでしょうか
朝市の隅
暗い冬の夜明けに
ひとむれ咲いた水仙
そこにだけは若い春が
暖かく燃えていた
行きたいわ 私も
あなたともう一度だけ
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