春夏秋冬 屋形船

一寸先は 夕まぐれ
江戸の真ん中 お台場あたり
ユラリ揺られて 波の上
恋盗人(こいぬすっと)の 闇の宴(えん)
夏の終わりの 屋形船
水をすくった 浴衣(ゆかた)の君の
後(おく)れ毛が ああ 風流たね

乱れる裾は こむらさき
障子(しょうじ)をあければ 灯りが揺れる
あなたが好きと 気づいてる
恋盗人の 憎らしさ
今夜で二度目の屋形船
ふくれるホッペに 手編みの籠と
鈴虫のプレゼント

金杉橋(かなすぎばし)は 雪化粧
「言葉が白い文字になる」
粋な台詞(せりふ)のその後で
恋盗人が ささやいた
冬の真ん中 屋形船
熱燗(あつかん)よりも あったかい
心のマフラー あげようか

春待ち草の 咲く丘は
言問橋(ことといばし)から 隅田のあたり
船頭さんが 微笑んだ
恋盗人も もうこれまでよ
これが最後の屋形船
未練残すな 浮世の恋に
ため息が ああ、風流だね
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