妻が願った最期の「七日間」

一日目には 台所に立つの
好きな料理を残らず 並べてあげたい
二日目には ミシンを踏もう
心残りはおいていかない

三日目には 片付けをする
愛した古布(こふ)と紅絹(もみ) 貰い手を決めなくちゃ
四日目には ドライブしたいわ
なつかしい景色が きっと新しい

五日目には パーティをひらく
家族の誕生日 一年分まとめて
六日目には 女子会をするの
薹(とう)の立ったガールズトーク お酒も飲むんだ

七日間の自由を 私にください 神さま 最期に七日間だけ
普通の幸せしか望まないのに それがいちばん難しいのね

七日目には あなたとふたりきり
こころ満ち足りて 私は旅に出る
また会えるその いつかのため
あなたの指に指を そっとつないで

七日間でいいから 私にください 神さま 最期に七日間だけ
普通の幸せしか望まないのに それがいちばん難しいのね
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