鬼ノ木偶刀、かく語りき

ふらり、ふわりと揺蕩(たゆた)う慕情(おもい)は
とんと知らぬ間に溶け消えて
蹴り上げた石 涯(はて)へと流れて此処は何処

否応(いやおう)在りやせぬ不条理道中
ならば、嗤いながら往きましょう
閃く緋(あか)に、さあ、唄えや――

定められた路を行くほど
素直、まして愚直でもなく
例え袂分(たもとわ)かつとしても
志(こころ)を貫いて

相容(あい)れぬなら そういっそのこと
迷い憂う我が身、心を
冥途への手土産にしてしまおうか

飾らるだけの木偶刀(でくがたな)など
全て、全て燃やしてしまえ
己(おの)が運命(さだめ)は何時だってこの手で掴み寄せる

否応(いやおう)在りやせぬ不条理道中
ならば、嗤いながら往きましょう
閃く緋(あか)に、さあ、唄えや――

流離(さすら)う鬼、独り
希望の鳴り響く方へ

ぽつり歩く夕暮れ小径(こみち)
伸びる影に潜んだ闇は
例え刃を立ててみても
憑いて離れぬまま

相容れぬなればこそ、尚更
熱く止め処無くこの胸を
灼き尽くす焔起(ほむらた)ち
未(いま)だ止まず

いざや踊れよ淡き泡沫 夢の如き下天の庭よ
何時か朽ち逝く運命(さだめ)ならば
只管(ひたすら)に燃やせ

熱く飛沫(しぶ)いた標(しるべ)の先に
待ちて受けるは絶望でも
閃く緋(あか)よ、さあ、照らせや――

「独り歩き走りいつか倒れたとて」
「この世の何処にも遺(のこ)る証左(もの)などなく」
「それで構わない」――と
叫ぶだけの愚かな自分を、嗚呼、どうか――

ふらり、ふわりと揺蕩(たゆた)う生命(いのち)は
とんと知らぬ間に流されて
されど誰かが掴んで寄せた

黄泉の奈落も地獄の淵も
ひらり越えて微笑み、ひとつ
悔いも怨(うら)みも全て、
全て仕舞いとしましょうや

否応(いやおう)在りやせぬ不条理道中
故に、嗤いながら往きましょう
閃く緋(あか)に、さあ、唄えや――

流離(さすら)う我ら、共に
希望の鳴り響く明日(あす)へ
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