わたすげ

わたすげの わたすげの
白い穂玉が 風に舞い
あなたの肩に わたしの髪に
とまってふるえて またとんだ
たわむれに
はじめてくちびる ふれあった
幼ない恋の しのび逢い
あの日とおなじ 夕陽がもえる

指きりの 指きりの
深い意味など わからずに
たがいにつよく むすんだ指の
痛みがいとしい 草の丘
まぼろしと
あきらめきれない わたすげは
おとなになった ためでしょか
絵本のままで おきたいけれど

わたすげの わたすげの
白い穂玉よ ときどきは
ふるさと捨てた あなたの夢に
わたしといっしょに とんでよね
うたかたの
はかない緑(えにし)と しりながら
月日じゃ消えぬ 遠いひと
もうすぐ雪に 埋もれます
×