猫が見ている

今夜も灰色の猫が
だまって私を見ている
トタン屋根に寝そべって
のぞいてるわ 私の心を

あんたに言われなくたって
わかるわ こんな毎日が
よくないこと それなのに
笑ってるわ 私の姿を

今日も うその涙を流し
実はおなかの中で笑い
男(ひと)の優しさを手玉にとり
いざというときに逃げた私
あんたみんな見てたのね

あんたも女の猫なら
すこしはわからないかしら
不幸せが人間を
いつのまにか変えることぐらい

髪をとかすその手を休め
胸にぽっかりあいた穴を
やせた手のひらで押えてみて
わざとほがらかに笑う私
あんたじっと見てるのね
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