組曲「薬疹」

第一楽章「紅斑」

どうしてこの使命を与えられたの
一度も望んだことなんてなかったのに
どうして歩み寄ることなく闘うの
一人瓦礫の山を見送って

醜い醜い体の中 這い回る
変色した皮膚の下を 這い回る
宿主は何処へ

盗んだ羽を飾りにして踊る
あどけない笑顔
あと少し歯車が遅ければ
識らずに済んだのかもね


第二楽章「水疱」

あなたは美しく
背景を塗りつぶす
わたしは駆け寄って
大樹のそばに佇む

全身に拡がる業の花
烙印を刻み
破綻してゆく無常な回路
何も悟られず
逃げた報いと知って

あなたは林檎を齧り
転生を騙り始める
迷える子羊は
聖母の顔も知らない

「時は満ちたか?」

感覚を閉ざして
委ねる
遠い過去の眠り


第三楽章「糜爛」

感覚を開いて
仰いだ
転生の時を

受け容れることもできない私たちは
茨の道で果てる
痛みすら感じない翼に憧れて
全てを拒絶する

滅びゆくままに走る光の中
力の限り叫ぶ

いくつもの意思の元に
虚構で染め上げた外壁が 剥がれ落ちてゆく
小さな宇宙は今 過去になった

呼吸を繰り返す度
斑模様に侵されてゆく
私の最期をどうか笑って
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