うたかた

幼い弟の手をひき
波間で戯れた
あなたの眼差しに見守られた
遥か遠い夏

陽炎に揺れているあなたの
面影が遠ざかる
掴もうとした瞬間はじける
しゃぼん玉のように

人は幸せの本当の意味を
失くした後で知る
二度と戻ることのできない日々を
“思い出”と名付けて
泡沫のときを生きる

もしもまた生まれ変われるなら
あなたと出逢いたい
伝え切れなかったこの想いを
今度は届けたい

だから今だけは
泣かないと誓った

人は幸せの本当の意味を
失くした後で知る
繋いだ指がほどけてゆくように
“思い出”に変わって
泡沫のときを生きる
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