らせん階段

ただそれは
この街にも ありふれた
愛の軌跡
名前すら 知らない
男と女が
“二人”と呼ばれただけのこと
ただ それは
白昼夢に まどろんだ
おとぎ 噺
夜が明けて 気づいてみたら
白い空と いつもの朝だけが
待っていたわ

猫のような 目をしている
寂しさを吸って 輝く瞳には
想い出が 渦を巻いて描く らせん階段

ひとときの 哀しみから
甦える 私だもの
いくつもの 出逢いを めぐりめぐっては
また違う恋に 生きるでしょう

こんな事なら 前にもあった
同じ事の 繰り返しよ
この胸を思い出が かけ上ってゆくわ らせん階段

暮れなずむ
裏町から 懐しい歌が響く
あの人の愛した この裏通りに
さりげない さよならの ドラマだわ
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