水の記憶

待ってる間に景色は沈んでゆく。
呼吸の仕方を忘れて
私は彼を作った。

私が居るのは水の中。
押し流されてから気付いたの。
遠くに消えて見えなくなっても
私は形を変えてどこにでも居る。
全て憶えていて欲しい。

悲しむ暇もなく沢山を見送って
夜が来て、目を閉じた分だけ
千切れてゆくの。
今日のことも忘れてしまうかな。

彼の作った青い世界で
夜に溺れた僕も。
朝を積み上げた私も
明日には消えてしまうかもしれないでしょう?

吸い込んで、吐き出して
淀んだ空気を見上げていた。
本当は無いかもしれない景色の中で
憶えていることも曖昧で。

明日には薄れるかな。
言葉も色褪せて、
それでも繋がって明日も続くんだろう。
飲み込まれた彼の歌を
今日も歌っているんだ。
歌って。
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