春になる

風に舞う君の 長い髪が絡まる夢をみたんだ
セピアにくるまれたフィルムから 零れ落ちた情景画

過ぎゆく季節に 手を振る君は
春の色に染まって
見慣れぬ仕草に 目を逸らしてしまう
僕の知らない君がいた

夜はまだ長く 息を潜めて
なんども君を抱き寄せた
窓越しの木々は芽吹く頃を忘れた 季節の残骸

花は咲き枯れるのに 僕の時間はどこで
止まったのだろう 教えて
見慣れぬ仕草に 目を奪われてしまう
春が遠くで笑った

夕闇に包まれた部屋
遠ざかる影を見送った 夢を みていた

過ぎゆく季節に 手を伸ばす僕を
錆びついた記憶に沈めて
惚けるように 振り向いた君は
僕の知らない君だった

春の色に染まって
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