旅人の法螺

街の風にかじかんだ手 固まった価値観
「確かめたい」と出て行ってがどうだった旅は?
探してた目的やら悟りやら自分は
まぁ抱え込んだ荷物置いてそこに座りな
誰しもがいつか出会う自分だけの景色は
街や旅や音や映画 それが名場面だ
おれはノート上 西日差す部屋の片隅
ちょうど今お前が座ってる椅子の上

必要なものならば照らす光だった
必要なものならばずっとそこにあった
人生を作品として描くときに
必要な紙や絵の具やらは片時も側にあった
どこも机上なんだ 空論にペンを走らせ
いらなくなった煙草燻らせ滲む導火線
朱に交われば何色の空?
見てきたと言うが、
それは聞くだけ無駄さ 旅人の法螺

とりあえずその面洗ってみてみなよ、ほら
汚れ落ちて我に返り晴れていく靄
それが探してきたお前ならば見たからもう用無い
付け合わせのパセリやら蛇の足のようだ
帰りしなにフッと月を見てみなよ、ほら
風も止んで雲のふちから晴れていく空
今日の月に名はないがそれがあれに違いない
そのときにもう一度生まれてきたことを祝いたい

旅の終わりに見た夜空
この赤い窓の隙間
帰り道のビルの合間
同じ月を見ている
果てしない距離を越えて
またとない今を添えて
何気ない宇宙の隅で
同じ月をそう だから
必要なものならばその光だった
一度は失う そう思うときもある
けれど必要なものならばずっとそこにあった
何が為生きるか知る部屋の溜息

宇宙の雄叫び 部屋の溜息
懲りずまたmake it
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