宇宙遊泳

誰も知らない丘の上 夜の帷(とばり)が降りてくる
何て真白なこの宇宙 何て独りなこの僕だ
夏の終わりの蜉蝣(かげろう)は 幼き日々の蒲団の匂い
一つ二つと流れ星 時の静寂(しじま)に語りかければ
遠く銀河の彼方から 妙(たえ)なる調べ転(ころ)び出し
音の波間の誘うまま
そして始まる 宇宙遊泳

箒(ほうき)の尻尾またがって 遥(はるか)か眼下を眺めれば
恋人達のさんざめき 母は我が子を待ちわびる
月の兎も飛び廻り 馬頭星雲そこまで駆けっこ
有為の奥山けふ越えて 2億光年乙女座辺り
花も恥じらう手弱女(たおやめ)に 星の冠捧げよか
天の河では水を浴び
泳いで行ける どこまでも

名前も知れぬこの星は 名前もいらぬ人ぞ住む
服は鈍(にび)色身は黄金(こがね) 楽の音(ね)をもて会話する
争わず 疑わず 絶えることない頬笑と
愛し合い 歌い合い 変わることない平穏の
何て静かなこの宇宙 何て小さなこの僕だ
故郷(くに)じゃ今頃鬨(とき)の声
やがて降り立つ 丘の上
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