莫迦酔狂ひ

柘榴(ざくろ)模様の太陽が
真っ赤に熟れて堕ちるのは
酔いどれ眼(まなこ)の生み出した
万有引力夢じゃない
退屈に煙(けぶる)る人生を
薔薇色に染める魔法水
暮らし倦みたる手の平に
注(つ)いでおくれよなみなみと
宿(ふつか)酔いの坂道に
髑髏(どくろ)の灯りの点(とも)るのは
厭世病者の見い出した
エレキテルかも嘘じゃない
西洋無類の神様も
酒呑みうわばみ酌をして
語り疲れた頤(おとがい)に
注いでくれるよだくだくと

天井裏から
蟲がどしゃ降る

枕元では
大名行列

頭蓋が割れて
記憶はこぼれ

牙を剥(む)き出し
ピンク色の象が走る

壁の穴から
眼玉はジロリ

窓の外では
有罪判決

一杯の勇気を
一瞬の陶酔を

羊水で割った
琥珀(こはく)色の海に沈む

酒は呑め呑め呑むならば
二度と戻れぬ呑むほどに

莫迦酔狂ひ
莫迦酔狂ひ
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