ねぇ、じいちゃん

路地裏
今にもつぶれそな酒屋の奥
必ず飲んでた角打ち手酌で
首から手拭い腹巻き巻いて
こっちだこっちと手招きをして
巾着ひとつに煙草はわかば
「自慢の孫きた」と笑いながら

隣の銭湯
湯上がり仲間へ
寅さんみたいに名調子でさ
マッサージ機正座「時は元禄~」
覚えたての口上となえ
「お代はいらぬ」と笑いながら

じいちゃん じいちゃん
ねぇ、じいちゃん
二人乗り自転車夕陽に包まれて
教えてくれたこの世で守るもの

最期のお酒を交わした湯のみを
今でも空に かざしてる

「幸せは自分でつくるもの
落ちてる小さな種見つけ
悲しみはいつかとけてゆく
繋いだ心離さぬように
生きてる喜び胸に…」

雨上がり堤防 朝焼け東の空
まるで子供のようにキラキラ瞳で
画用紙いっぱい真っ赤に塗って
「太陽は毎日昇る」と言った
まるでサヨナラの代わりみたいに
「忘れるんでないぞ」と言ったんだ

時々まぶた閉じ振り返る道
自分次第で景色は変わるからと
教えてくれたあなたに逢えて
心に住んでる変わらぬ笑顔で
「大丈夫だ」と背中押す

時代がどれだけ流れても
大切なものは流さずに

両手を広げて抱きしめる
重ね歩んだ季節を思う

人は笑うため生きている
涙も心をうるおすと

すべてが意味ある事だよと
かけがえのない今という時
ゆっくり歩いているよ
ゆっくり歩いているよ

またいつかきっと会えるよね
燃える朝日に手をかざし
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