白い手袋ささの舟

初雪の駅に 馬車をとめて
白い手袋を 泣いてとどけた
汽車にのる あの人に
ねむらずに昨晩(ゆうべ) 私が編んだ
白い手袋を 両手にはめて
涙をふいてくれたあの人
汽車は煙をはきながら
町から出ていった
私はあぜ道を走った
小さく 消えてゆく
あの人も 白い手袋を
ふりながら 泣いてた

初雪がとける 川の岸で
ひとり笹舟を 水に浮かべた
あの人に逢いたくて
あの人の舟と 私の舟と
ふたつ浮かべたら 水にさかれて
小さく悲しそうに 輪をかいた
離れ離れで笹舟は
水面を流れゆく
私は川岸を走った
つらいさよならの北風を
背中の帆にうけて
泣きながら 走った
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