お吉 恋情け -女殺油地獄より-

帯をほどいて 抱いてとすがる
お吉はあんたが いとおしい
十年先の 思案より
今や今やで 燃えつきるのは
思い濡れ髪 みだれ紅

初めはほんの遊びやったのが、今はほんに夢中やがな…
あんたの若さが憎らしいほどわたしを燃やす。
別れたと思うたらもう逢いたい。
この髪ひとすじ、甘く触れる唇もそうや。
みーんなあんたのもんや、あんたのもんやで…

どこのおなごに うつつをぬかす
かなしいおひとの 恋灯り
火をつけたのは あたしでも
あんたあたしを 狂わせとます
さだめ憎らし 人の妻

あんた近頃どないしたっちゅうのでしょうか。
あたしを放(ほか)してしまうといわはるのでっしゃろか、罪なおひとや。
逢いたい…逢いたい あんた。
どうか後生ですから、逢ってつよう抱きしめておくれ、なア。

心がわりや 云うことならば
いっそ殺して おくなはれ
十日に一度 月一度
抱いてくれたら それだけでいい
命がけです 恋地獄
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