エデンを遠く

休みませんかほっと妻の声 腰を叩いてふっと空仰ぐ
二人で食べる分だけの 野菜畑はやっと春
つめ草の上に腰おろし 熱き紅茶を手で包む
エデンの園を遠く離れて 我ら老いたるアダムとイブか
妻は微笑みリンゴ剥く 赤きリボンをそっとほどくよに

たがやす畑夫婦二人きり ザルいっぱいのやっと実りでも
たとえ曲がった胡瓜でも 育てたものは愛おしく
春をたがやし夏を待つ 話すこともない昼休み
サクリサクリとリンゴを喰えば 我ら老いたるアダムとイブか
妻は微笑み指をさす ジャガイモの花そっと見つめては

こんな歳までまだ働いて 楽が出来ないきっとバカなのだ
百姓暮らしの気楽さは 汗かくたびに飲む水の
どんな酒より美味くって ビール一杯が幸せで
エデンの園はここかもしれぬ 我ら老いたるアダムとイブか
妻と互いに杖代わり 手で支え合うさぁあ帰り道
人という字の 帰り道
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