大人になったら

夜の港へ連れ出して見せてくれた夜景
門限はとっくの前に過ぎていたけれど
あの頃の私には新鮮で鮮明で
何もかも魔法にかかったように
輝いて見えた

大好きだったな、歳上のあの人。
何でも出来てしまう私のヒーローだった

あの頃のあなたと
同じ歳になって気が付いた
大人ではなかったな
大人なんていないんだ

車が運転できるとこ
苦いコーヒーが飲めるとこ
ビールの旨さが分かるとこ
会社帰りって言ってくるとこ

どれも憧れだったんだ
私には無いものを持って
大人な人 大人なあなた
そんなところが好きだった

あの頃のあなたと
同じ歳になりたくなかったな
気付いていたのかもしれない
大人なんていないんだって

あの頃のあなたと
同じ歳になった私は今
心は変わらずあの頃のまま
歳だけが過ぎてしまって
あなたは記憶の中に居て
やっぱ輝いていた
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