犬吠埼

夜の帳(とばり)を 呼ぶように
水平線に 夕日が落ちる
あの日あなたは 言ったのに
ここで逢おうと 抱いたのに
一人たたずむ 犬吠埼は
なだめてくれる 花もない

ひとつふたつと 想い出を
ためらいながら 水面(みなも)に捨てる
理由(わけ)を聞いても 波が消す
泣いて呼んでも 風に散る
蒼く暮れ行く 犬吠埼は
あなたに届く 邪魔をする

ふたり一生 離れない
願いを込めた あの日の手紙
白いポストは 幸せを
きっと運ぶと 信じてた
涙こらえる 犬吠埼は
ちぎれた手紙 空に舞う
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